コスモスに君と という曲は井荻麟、いや富野由悠季監督作詞、すぎやまこういち作曲という豪華な曲の一つだ。富野監督を知らない人はまさかいないと思いたいが、伝説巨人イデオンや機動戦士ガンダムシリーズの監督であるお方だ。すぎやまこういち氏はドラゴンクエスト等の作曲をされている。御年88歳。
今回は富野監督の作詞にフォーカスを合わせようと思う。富野監督は独特の富野節が有名であるが、作詞の際は劇中の台詞とは違って冷静で上品で壮大でレベルが高すぎて何の比喩なのかよくわからない歌詞が多い。それらと比べるとコスモスに君とという曲はわかりやすい。
まずタイトルの自分なりの解釈を述べたい。
タイトルに私は妙な違和感を感じずにはいられない。コスモスを君に のほうがしっくりくると感じるのだ。その違和感は単純にコスモスを花のコスモスと思って言っているからだ。つまり結果的にコスモスは花ではなく
一般的に、宇宙を秩序ある、調和のとれたシステムとみなす宇宙観である。「秩序、整列」を意味するギリシア語のκόσμοςという言葉に由来し、
カオスと対をなす概念である。
wikiの引用であるがこっちのコスモスであろう。つまり宇宙を創造した神のような視点なのである。調和というのはアニメを見た上では平和で争いがない宇宙のことであろう。ネタバレになるが劇場版の衝撃のラストのわかりあうシーンのことをさす気がする。ただこのタイトルから伝えたいことを読み取るのは難しい。アニメのみであれば平和な世界へ君といき、いきたいという感じであろうか。どの段階でこの歌詞を書いたかわからないのであの結末を前提にして書いたのかはわからない。あとコスモというキャラクターが主人公であるのと関係があるかもしれないしひょっとしたら監督の用意していた違う結末のためのものかもしれない。そういう意味でOPの歌詞はアニメで有言実行しており明確だ。富野監督の歌詞で有言実行は珍しいと思う。
さておき歌詞のすごさを述べたい
たった一つの星にすてられ 終わりない旅君と歩むと
まずこりゃ凄い。いきなりこんな哀しい感じなのだ。親ではなく故郷の星≒世界に捨てられて終わりない旅をするという重い内容である。ただこのいきなり重いことをいうことで一気にリスナーに世界観への没入感を与える効果があると思う。この歌詞はアニメの内容に合致してるしspace run away(宇宙を逃げる)というOPやアイキャッチ(?)というよくでてくる言葉の遠回しな使い方だ。旅ではあるが実情は放浪であり旅なんていう楽しさありのものじゃない。こんなことをぽんとはじめに持ってくる富野監督凄い。
傷をなめ合う道化芝居
これまた凄い凄い言葉。こんな言い回し40代になっても思いつかないだろう。こういう言葉を思いついてしまうあたり天才であるし歌詞で鳥肌が立つという希有な体験を私はした。富野監督にはGレコと平行して作詞活動をもっとしていただきたい。
ここの歌詞の意味をパット説明するのはなかなか難しい。それほどうまい表現である。無理して言えば、心の傷をお互い埋め合い慰めるまねをしてるという感じだろうか。いや説明できていない。この前の歌詞に
慈しみふとわけあって
放浪をする仲間(男女のほうがしっくりくるが)で愛を分け合って傷ついたときはお互いで癒やし合うけど、それは演技でしかないという皮肉というかなんというかそういうものを感じる。結局本気で相手のことを思いやることなんて人間はできないかもしれない。極限の精一杯の状況だとなおさらである。とても深いです。それと”ふと”分け合ってという”ふと”という言葉がなんとも言えず棘のようなものを感じるのは私だけだろうか。全然説明になっていないのは私の国語力不足です。
コスモス宇宙(そら)をかけぬけて
これがコスモスを花と捉えたくなる理由だ。ガンダムF91にて”セシリーの花なんだよ”と主人公が広い宇宙で突然言う。この花は命を間接的に表している。この台詞も富野節ですばらしい。
宇宙で花は自分から動けいないので命よ宇宙をかけぬけろみたいな感じかな。
もしここをコスモスが宇宙だとするとダブルミーニングになってしまう。宇宙宇宙駆け抜けてはさすがに変だ。無理矢理すれば秩序ある宇宙を駆け抜けてというところか。
とりあえずこの歌詞が解読を煙に巻く感じがある。ただなんとなく世界観を感じられます。
二番に入ろう
わかれてみたら きっと楽だよ
一番に負けないインパクトである。世界観が世界から個人レベルまで狭くなった。人間関係で問題があったのだろう。放浪で仲間や恋人と関係がうまくいかないのはさらに追い打ちをかけるであろう。
すりへらす日々 君はいらない
とても強烈だ。まるで結婚して時間が経ってお互いの欠点がわかり、息づまった夫婦のようだ。苦しいのではやく楽になりたくなる重い内容だ。
思いやりふとあげてみる 涙が乾いた肌に
慈しみから思いやりという言葉に変わった点をどう捉えるか難しい。慈しみのほうが思っている度合いが高いように思う。慈しみが道化芝居であるなら思いやりは心からのものなのであろうか。わからない。そして涙が乾いた肌というのがいい。おそらく泣き止んだ相手に思いやりを与えて仲直りをするのではないだろうか。そうであってほしい。
そして三番だ。
三番は主に死と愛について語られる。ネタバレ含みそうなので深くは語らないがイデオンの哲学が凝縮してる。死は悲しいものじゃないかもしれないというかんじだ。みんな○○○。
大まかに一番は故郷を捨てることになった船員、そこで育まれる愛
二番が愛が枯れかけた様子、人間関係が無機質な感じ
三番が最後に愛と死の形であろう。
若者→中年→老年という順番にも思える。
あくまで私の勝手な意見である。とりあえずいい歌。
イデオンめっちゃ好き。